第55代理事長
豊田 善隆
理事長所信
はじめに

 私たちの故郷萩は全国でも有名な観光地です。萩という地名は多くの方々に知られ、明治維新発祥の地として多くの偉人を輩出し、日本の近代化の礎となりました。この小さなまちでなぜあれだけの偉業ともいえる事を成し、時代を動かす若者が輩出したのでしょうか?それはこの海、山にかこまれた豊かな自然と、人を育てる風土があり、優れた教育者、吉田松陰先生がいたからではないでしょうか。
 なぜ彼らは今もなお私たちを魅了し、心をうつのでしょうか?熱狂的に血をたぎらせる姿に感動したり共鳴したりするのでしょうか? それは自分のことはさておき祖国故郷のために働いたからではないでしょうか?自分の身を投じて世のため、人のために真剣に時代と向き合ったからではないでしょうか。そんな彼らに私たちはあこがれ、そうなりたいと思い感動し心をうたれます。
 現代において命をかけてというと少し怖い気がしますが、ひとり一人が心の中で自分勝手に自分のことだけ考えるのではなく、相手のことをおもいやり、相手の喜びや悲しみを自分のことように思える気持ちをもてるようになれば、我々の目指す明るい豊かな社会になると信じています。
おもいやりのこころ ―仁

 儒教の言葉に「仁」という言葉があります。仁という言葉はおもいやり、慈愛という意味で儒教の中でも最高の徳とされ武士道にも通ずると言われています。それは単なる優しさだけでなく、自分を律する克己心の中にある優しさで、武士の情けに代表されるように敗れた者への仁の心は厳しい戦の中にもありました。まさしく自分に厳しく他人に優しくの精神です。
今、社会は人間関係の希薄化や凶悪犯罪等深刻化していますが、まず出来ることは40歳前の青年である私たちが子供を持つ世代として、親として自分を見つめることから始めなければならないと思います。自分を律すること、大人として正しい行動をとることによって言葉に説得力が生まれると思います。私たちが規範となるべく行動していかないと誰も私たち青年会議所運動に賛同してくれませんし、理解も得られません。そのための会員の資質向上、指導力に力を入れていきたいと考えます。また、家族の絆、会員の絆、市民の絆の大切さを今一度考え、人を愛し相手をおもいやる優しい心を次世代へしっかりと伝えるべく青少年育成事業を展開していきたいと考えます。私たちがかわることによってきっと社会がかわり心痛むことがらも少なくなると信じています。
志 こころざし

 綱領にもあるように青年会議所はよく志という言葉を使います。辞書には目的、信念とありますが、この言葉をひもとくと十一人の心で成り立っています。中でも士という漢字は十人を一人が支えており、この気概をもつことが志だそうです。私は自分の私利私欲のための目的信念ではなく、他の十人つまり家族、地域や国家のための夢と希望だと理解しています。
今、私たちを取り巻く環境は決して明るいものではなく世界、日本そして地域において様々な問題に直面しています。近年の経済危機、中国をはじめとする近隣アジア諸国の台頭、また新興国の目覚ましい躍進発展など政治や経済における世界の構図、あるいは勢力分布図がまさしく音をたてて変貌している感があります。メディアの論調によりますとあたかも日本が次第にとり残されていくかのような感じをうけ、何か暗く将来の展望が描けない国にいるような印象をうけます。また、特に私たちの住む地方においては、人口減少、少子高齢化、雇用問題、地方経済の衰退等右をみても左をみても暗い話があまりにも多く、先行きの不透明感は拭えません。
しかし、だからといって混沌とした現実の前に後ろ向きに考えても、誰かのせいにしても何も解決しませんし、何かに頼る時代はすでに終わったと認識しなければなりません。今こそ私たち青年が若者らしく率先して元気をだして、国や地域の将来を信じて、理想や夢を語り、混沌という未知の可能性を切り拓かなければ、夢と希望にみちた未来などないと思います。嘆いても憂いても仕方がありませんまず行動しましょう。
志士仁人

 本年度スローガンを「志士仁人 〜強く優しく〜」とさせていただきました。今私たちに必要なことはどんな状況や環境だろうと、志士のごとく前を向く強い志と子をもつ親として社会人として自分を律し他をおもいやる優しい仁の心が重要であると思い決めさせていただきました。こうしたいと強く願う気持ちや思いと人を愛し相手をおもいやる優しい心がきっと人を動かし、まちを動かし、国がかわると信じています。
終わりに

 幕末の志士の多くは20代、せいぜい30代。そんな彼らが維新を成し遂げました。寿命の短い時代とはいえこの国に近代をもたらしたのはこれほど若い力でした。時代を切り拓き、変革する突破力は若者にしかない。
吉田松陰先生は、「志を立てて以て万事の源をなす」、すなわち志を立てることがすべての源になる。何事も志がなければならないと説きました。
私は本年理事長として一番勉強、修練をさせていただく機会をいただいたことに感謝するとともに、青年は青年らしく高い志をもち、より強い絆でむすばれ、このまちの可能性を信じ、より存在意義のある青年会議所運動に取り組んで参ることをここにお誓い申し上げます。
 
志士とは即ち 道に志すの士なり
仁とは人なり 人にあらざれば仁なし
吉田松陰先生の言葉